日本心臓血管外科学会雑誌
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瘤の形成過程を観察・治療しえた感染性下腸間膜動脈瘤の1例
青木 哉志一関 一行棟方 護鈴木 保之福井 康三高谷 俊一福田 幾夫
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2004 年 33 巻 4 号 p. 287-290

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抄録

症例は64歳,女性.腰痛,発熱で発症し,腹部CT上,腎動脈下大動脈および下腸間膜動脈起始部の周囲の低吸収域と,肝門部の肝膿瘍を認めた.入院当初より感染性動脈瘤を疑っていたが,確診は得られず,抗生剤の投与を開始した.炎症所見の消退と解熱がみられたが,第12病日に吐血し,ショック状態となった.緊急CTを施行したところ,腹部大動脈周囲低吸収域は拡大し,下腸間膜動脈根部に最大径16mmの拡張・瘤化が認められた.感染性動脈瘤切迫破裂の診断のもと,緊急手術を施行した.腹部大動脈周囲には壊死組織と血塊からなる6cmの腫瘤を認め,腫瘤は十二指腸水平脚に接していた.大動脈内腔には潰瘍形成を認め,十二指腸へ穿通していた.腹部大動脈を腎動脈下大動脈と大動脈末端で縫合閉鎖し,左腋窩-大腿動脈バイパスをおいた.開放した腹部大動脈と十機二指腸の間には大網を充填した.大動脈周囲壊死組織の培養検査では,Klebsiella pneumoniaeが検出され,抗生剤の投与を継続した.術後経過は良好で,術後46日目に退院した.感染性動脈瘤の十二指腸穿通例は死亡率も高く予後不良であり,早期診断,治療開始が最も肝要と考えられる.感染初期から感染性動脈瘤形成および十二指腸穿通までの経時的経過を観察し,緊急手術により救命しえたので報告する.

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