日本心臓血管外科学会雑誌
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急性腹部大動脈閉塞症の外科治療
多田 誠一泉 賢太山田 卓史
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2004 年 33 巻 6 号 p. 375-381

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抄録

1999年4月~2003年9月に経験した急性動脈閉塞症32例のうち腹部大動脈まで閉塞の及んだ4症例(12.5%)について検討した.年齢は63~75歳,平均68.7歳,心房細動(af)は3例に認めた.閉塞原因はおもに塞栓と閉塞性動脈硬化症に伴う血栓と思われた.手術は2例で局所麻酔下に両側大腿動脈より血栓除去術,1例は透析下開腹血栓除去術,1例は鎖骨下両大腿動脈バイパス術を行い,下腿減張切開,大腿膝窩動脈バイパス術,僧帽弁置換術を1例ずつそれぞれ追加した.周術期死亡は広範囲脳梗塞による1例で,ほかの3例は経過良好であった.急性高位腹部大動脈閉塞では早急な診断,抗凝固療法開始,症例相応の低侵襲な血流再開に加え,閉塞をきたす原疾患・合併症の治療が予後を左右する.また,再還流障害であるmyonephropathic metabolic syndrome (MNMS),急性腎不全,コンパートメント症候群の発生にも早期より留意すべきである.

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