腹腔動脈,上腸間膜動脈閉塞,右腎動脈および両側腸骨動脈閉塞と左腎動脈狭窄があり,腹部臓器および下肢血流が左内腸骨動脈からの側副血行路のみで維持されているCrawford III型胸腹部大動脈瘤に対する1手術症例について報告した.症例は54歳,男性.左内腸骨動脈送血,経左大腿静脈右房脱血によるF-Fバイパスによる部分体外循環下に腹腔動脈,上腸間膜動脈,左腎動脈,両側大腿動脈への血行再建を伴う胸腹部大動脈再建術を施行し良好な結果が得られた.複雑な病態を有する胸腹部大動脈瘤手術では,詳細な病態把握を行い適切な補助手段,手術術式を選択することが肝要である.