日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
若年者特発性腹部大動脈破裂の1救命例
登坂 有子金沢 宏高橋 善樹中沢 聡山崎 芳彦
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 33 巻 1 号 p. 57-60

詳細
抄録

特発性大動脈破裂は,瘤形成や急性解離,感染,外傷などを伴わない大動脈破裂と定義され,きわめて希な疾患である.今回,若年者特発性腹部大動脈破裂の1例を経験したので報告する.症例は14歳男児,下腹部激痛で発症し救急搬送された.腹部CTでは大量の後腹膜血腫が存在し,腹部大動脈周囲に造影剤が漏出していたが,動脈瘤や動脈解離は認めなかった.腹部大動脈破裂と診断し,緊急手術を施行した.左開胸下に胸部下行大動脈を遮断し,出血をコントロールしたのち開腹した.腹部大動脈分岐部に直径8mmの穿孔を認めたが,瘤形成や解離,感染の所見はなかった.径10mmのダクロングラフトでI型人工血管置換術を施行した.病理組織所見では,中膜弾性線維が部分的に減少し,きわめて限局性に中膜が解離していたが,炎症や嚢胞性中膜壊死の所見はなかった.本例は発症年齢や破裂部位,瘤形成や急性解離を伴わない大動脈破裂という点で希有な1例である.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top