日本心臓血管外科学会雑誌
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分岐型ステントグラフトによる腹部大動脈瘤の治療
Power WebTM systemの多施設臨床治験成績
石丸 新川口 聡星野 俊一緑川 博文小出 司郎策志村 信一郎江里 健輔善甫 宣哉青柳 成明田中 厚寿
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2004 年 33 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

全国5施設において,腎動脈下腹部大動脈瘤を対象に分岐型ステントグラフト(SG)であるPower WebTM system(Endologix社,USA)を用いて待機的治療を実施した.治療は適応判定委員会によって選択された症例につき,各施設のIRBが承認した説明と同意手順のもとに施行された.対象60例(うち男性53例)のSG運搬成功率は96.7%であった.術中にtype Iのエンドリーク(EL)を2例に認め,技術的成功率は93.3%であった.手術時間は193±55分,出血量は440±240gで,対照とした人工血管置換手術97例(うち男性83例)のおのおの303±88分,1,496±2,025gと比較し有意に短時間,少量であった.退院時または術後1ヵ月のCTで4例にEL(type I3例,type II1例)を確認した.Type IのELは,SG固定部が短く,かつ屈曲した症例にみられた.左腎動脈閉塞と,内腸骨動脈閉塞による一過性の臀筋痛を各1例に認めたが,入院死亡はなかった.術後6ヵ月では,他病死1例と追跡不能1例を除いた56例のうち1例にSGの脚閉塞を認めたが,ほかに新たなELや重篤な有害事象の発生はなかった.瘤径は縮小26例,不変30例で,拡大例はなかった.Power WebTM systemは腹部大動脈瘤に対する低侵襲治療として臨床使用可能なSGであり,今後の長期間にわたる成績が待たれる.

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