日本心臓血管外科学会雑誌
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胸骨部分切開アプローチによる僧帽弁位再手術
垣 伸明今関 隆雄入江 嘉仁木山 宏村井 則之吉田 浩紹権 重好汐口 壮一齋藤 政仁岡田 修一
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2005 年 34 巻 3 号 p. 163-166

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抄録

Full sternotomyによる心臓再手術では,胸骨との癒着剥離に伴う心損傷が大きな問題点としてあげられる.当科では胸骨との癒着剥離を減らす試みとして,minimally invasive cardiac surgeryの手法を利用し,胸骨部分切開による僧帽弁位再手術を行っているが,これがアプローチの一手段になるのか検討した.1997年7月から2002年3月に行ったpartial lower hemisternotomyによる僧帽弁位再手術は,20例あり,P群とし,1990年4月から1997年6月に行ったfull sternotomyによる僧帽弁位再手術は,13例あり,F群とし,両群間において周術期因子,成績などの比較検討を行った.手術は両群ともに全例人工弁置換術を行ったが,P群ではMaze同時手術が有意に多かった(P群:8例,F群:1例).大動脈遮断時間はP群で有意に長かったが(P群:110±5分,F群:87±11分),体外循環時間,手術時間に差を認めなかった.術中の出血量と他家血輸血量はP群で有意に少なかった(P群:666±100ml,3.1±1.2単位,F群:2,405±947ml,8.5±2.5単位).術後の挿管時間,ICU滞在時間はP群で有意に短かったが(P群:18±2,60±9時間,F群:38±12,96±10時間),術後在院日数には差を認めなかった.成績は,F群では術中に胸骨との癒着剥離のさいの心損傷を2例認め(15%),いずれも術後にMOFより死亡したが,P群では,開胸のさいの心損傷や手術死亡は認めず,全例軽快退院した.よって僧帽弁位再手術において,partial lower hemisternotomyはfull sternotomyに対し,術中出血量が削減され,開胸のさいの心損傷が起きにくいと考えられ,また,術後成績も良好であることから,アプローチの一手段になると思われた.

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