日本心臓血管外科学会雑誌
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重症心不全に対する初期の治療戦略
補助循環の使用と適応症例の検討
今坂 堅一森田 茂樹大石 恭久岩井 敏郎梶原 敬義益田 宗孝安井 久喬
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キーワード: 多臓器不全
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2005 年 34 巻 4 号 p. 243-247

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抄録

1997年の臓器移植法施行後,当科で機械的流量補助を必要とした6名において,重症心不全に対する初期の治療戦略を検討した.症例は急性心筋梗塞2例,拡張型心筋症3例,劇症型心筋炎1例.補助手段は,経皮的心肺補助(PCPS)2例,補助人工心臓(VAD)4例であり,うち2例は急激な循環不全のためPCPSを使用した.1)急性循環不全によりPCPSを導入した2例中1例離脱,1例はPCPS施行中に多臓器不全(MOF)で死亡した.2)慢性心不全の急性増悪によりVADを導入した2例は経過良好であったが,頻回の塞栓症を併発し,1例はMOF,他の1例は脳梗塞で死亡した.3)VAD導入前にPCPSを用いた2例は,VAD導入前の総ビリルビン値(T.Bil)が14.9,20.9mg/dlであり,最終的にMOFで死亡した.重症心不全の治療では,PCPSは急性循環不全症例に効果があるが,1)心機能の回復が認められない場合,2)経過中T.Bilが上昇する場合,早急にVADへの変更を考慮すべきである.

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