日本心臓血管外科学会雑誌
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小児貯血式自己血輸血による無同種他家血輸血開心術の術後肺酸素化能に及ぼす影響
駒井 宏好久岡 崇宏藤原 慶一内藤 泰顯岡村 吉隆
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2005 年 34 巻 4 号 p. 248-252

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抄録

白血球除去フィルターを用い術中輸血中の同種血白血球を除去することで術後の肺酸素化能が改善することが明らかになっているが,最近われわれは小児開心術において輸血合併症予防のため,術前自己血貯血による無同種血輸血手術を積極的に行っており,これらの症例では同種血白血球のみならず血漿成分も入らないため体外循環に起因する炎症反応による肺障害がより軽減される可能性がある.そこで無輸血手術を達成できた小児心室中隔欠損例での術後呼吸機能を輸血症例と比較してみた.われわれの術前貯血プロトコールに従って同種血輸血手術を回避できた体重10kg以上の小児心室中隔欠損例16例(自己輸血群)の体外循環離脱直後から術後6時間までの肺酸素化能をrespiratory indexを算出することで評価した.これを同一疾患の同種血輸血症例(白血球除去フィルター使用:他家輸血群)17例と比較検討した.また術後挿管時間,白血球数,CRPも比較した.患児の年齢,体重は自己輸血群3.4±0.6歳,14.3±1.5kg,他家輸血群4.2±0.4歳,15.7±0.8kgと有意差を認めなかった.術後の挿管時間に両群間で有意差はなかった.体外循環直後,手術直後でのrespiratory indexは両群間で差はなかったが,他家輸血群が術後から再び悪化しているのに対し自己輸血群では時間経過に伴う悪化はなく,術後3時間,6時間には0.43±0.08,0.38±0.07と,他家輸血群(0.79±0.15,1.60±0.17)に比し有意に低値をとった(それぞれp<0.05,0.01).白血球数は術前,術後1日,1週間で両群間に有意差はなかった.CRPも術前,術後1日,1週間,2週間で有意差はなかった.10kg以上の軽症例で行っている自己血貯血による小児無同種血輸血手術では他家輸血例に比べrespiratory indexは術後3,6時間で有意に低値をとり,術後管理がより安全に行えることが実証された.自己血貯血による小児無同種血輸血開心術は輸血回避のみならず術後肺障害の改善にも有用であることが確認された.

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