日本心臓血管外科学会雑誌
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術後に腸管壊死,多臓器不全を合併した院外心肺停止腹部大動脈瘤破裂の1救命例
栃井 将人松田 均荻野 均湊谷 謙司佐々木 啓明稲福 斉今中 秀光
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2005 年 34 巻 4 号 p. 268-271

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抄録

症例は61歳,男性.腹部大動脈瘤(AAA)破裂のため,自宅で心肺停止となった.ドクターカーの救命医によってただちに心肺蘇生(CPR)が行われ一時は心拍が再開したが搬送中に再度心肺停止となった.来院時,意識はJapan Coma Scale 300,徐脈で血圧測定不能であった.超音波検査でAAAと後腹膜血腫を認めたため,AAA破裂と診断し緊急手術となった.左上腕動脈から大動脈閉塞バルーンを挿入して出血をコントロールし血行動態が安定したのち,腹部正中切開にて開腹した.破裂を伴う6cm径のAAAと,多量の後腹膜血腫を認め,Y字人工血管置換術を施行した.術後5時間で,下行結腸からS状結腸の壊死が判明し,左半結腸切除,人工肛門造設術を行った.急性腎不全のほか,肝機能障害,虚血性脳障害,左後頭葉および頭頂葉の脳梗塞を合併したが,持続鎮静下の全身管理によって肝腎機能が正常に復し,血液透析および呼吸器からの離脱に成功した.脳梗塞による右半盲,感覚性失語の症状はあるものの,意思疎通は可能で,介助なしでの経口摂取,歩行器による歩行ができるまでに回復した.院外で心肺停止に陥ったAAA破裂の1例に約40分間に及ぶCPRののちに手術を施行した.術後に腸管壊死,多臓器不全を合併したが,重篤な後遺症なく救命できた症例を経験したので報告する.

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