2005 年 34 巻 5 号 p. 378-381
興味ある限局型胸腹部大動脈瘤の1例を呈示する.症例は60歳,女性.高血圧・高脂血症で通院中,嘔気を認め当院を受診し,両側水腎症・後腹膜繊維症・炎症性腹部大動脈瘤・胸腹部大動脈瘤の診断で入院となった.両側尿管狭窄に対して両側尿管ステント留置を施行され,腎機能の改善後ひき続いて胸腹部大動脈瘤の手術を施行した.右大腿動静脈からの部分体外循環下に胸腔内のみで大動脈を遮断,末梢吻合を先行し瘤切除・人工血管置換を施行した.腹部大動脈周囲の炎症・繊維化は胸部まで及んでいなかった.後腹膜繊維症・炎症性大動脈瘤・限局型胸腹部大動脈瘤の合併を,発生機序・病態から文献的考察を加えて報告する.