日本心臓血管外科学会雑誌
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拡大後腹膜経路が有用であった胃切除術後・膵頭十二指腸切除術後の傍腎動脈腹部大動脈瘤破裂手術
吉本 公洋椎谷 紀彦国原 孝安田 慶秀
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2005 年 34 巻 6 号 p. 409-412

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抄録

症例は70歳,男性,胃切除術および膵頭十二指腸切除術の既往がある.歩行中に腹痛が出現し当院救急部に搬送され,到着直後にショックを呈した.血行動態確保ののち造影CT施行,傍腎動脈腹部大動脈瘤破裂の診断となり緊急手術となった.腹腔内に大量の血腫が存在,腹部分枝の起始部が近接し腎動脈直上での大動脈遮断は困難と考えられ,また,後腹膜郭清を伴う開腹手術の既往より腹腔内および大動脈周囲の強固な癒着が推測された.これらより後腹膜経路での大動脈到達を選択,腹腔動脈上遮断の方針で手術開始した.左腎動脈直下から総腸骨動脈分岐手前までの直型人工血管置換術を施行,経過良好にて術後25日で退院となった.腹腔内に高度癒着が予想される傍腎動脈腹部大動脈瘤破裂緊急手術症例に対し,開胸・拡大後腹膜経路が有用であった.この術経路は大動脈のコントロールを迅速,安全,確実に施行可能であり,破裂瘤緊急手術のさいの有用なオプションとなると考えられた.

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