2005 年 34 巻 6 号 p. 440-444
症例は72歳,女性.8年前左腎細胞癌(pT3hpN0 pM0 Stage III A)のため根治的左腎摘除術を施行した.近医の心エコーで右室腫瘍を認め入院した.心エコー,CT,MRI,CAG,右室腫瘍生検にて腎細胞癌の下大静脈から連続進展のない右室転移と診断した.右室流出路狭窄をきたしたため手術を施行した.手術所見は心室中隔から成長した腫瘍が右室流出路においては肺動脈弁から手前1cmまで浸潤,流入路では三尖弁の中隔尖と前尖の一部まで浸潤していた.根治的摘除術は不可能のため腫瘍部分切除と肺動脈右室流出路パッチ拡張術を施行した.病理組織診断で腎細胞癌根治的摘除術後の右室転移と確定診断した.術後インターロイキン-2の投与を行った.術後8ヵ月で施行した心エコーでは右室腫瘍の増大が見られたものの流出路狭窄は認められなかったが,術後11.5ヵ月に腫瘍による右室流出路閉塞をきたし死亡した.きわめてまれな左腎癌摘除術後の下大静脈から連続進展のない右室転移症例を経験した.治療は腫瘍部分切除・肺動脈右室流出路パッチ拡張術とインターロイキン-2の投与を行い,延命効果があったと考えられたが治療の限界も認めざるを得なかった.