日本心臓血管外科学会雑誌
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Stanford A型急性大動脈解離における術後AR残存症例の検討
杉本 努山本 和男吉井 新平田中 佐登司斎藤 典彦菊地 千鶴男青木 賢治桑原 淳春谷 重孝
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2005 年 34 巻 2 号 p. 93-97

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抄録

Stanford A型急性大動脈解離における術後大動脈弁閉鎖不全(AR)残存症例について,中枢側解離形態,術前AR評価などを中心に非残存例と比較検討した.大動脈中枢側断端形成術を行い,術前後心エコー検査でARの評価が可能であった38例を対象とした.術後AR II度以上をAR群(n=6),I度以下をno AR群(n=32)とした.両群間に年齢,性差,術前併存症に有意差はなかった.術前ショック状態は50%,18.7%とAR群がより重症の傾向であった.術前心エコー検査によるARは2.25±1.17度,0.69±0.91度(p<0.001)であった.とくに術前AR III度以上はそれぞれ66.7%,0%と有意にAR群で高度であった(p<0.001).術前CT検査のSTJ levelの解離率は0.90±0.20,0.68±0.26と有意差は認めなかったがAR群で解離率が高い傾向であった.上行大動脈にエントリーを認めたものは66.7%,37.5%とAR群でより中枢側の解離例が多かった(p<0.05).今回解析した大動脈中枢側断端形成38例ではII度以上のAR残存例は6例(15.8%)であったが,AR III度以上は3例(7.9%)とほぼ満足のいく結果であった.術前AR III度以上,上行大動脈にエントリーがあるものに,術後AR残存の可能性が高いことが示唆された.

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