日本心臓血管外科学会雑誌
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縦隔内循環器官への浸潤,転移により循環障害をきたした心臓関連悪性疾患に対する外科治療の検討
長 泰則鈴木 暁芳賀 佳之橋詰 賢一
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2006 年 35 巻 1 号 p. 10-13

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抄録

縦隔内循環器官への浸潤,転移により循環障害をきたした心臓関連悪性疾患に対し,根治的あるいは循環動態改善のための姑息的外科治療が妥当かどうか検討した.2001年1月から2004年2月まで当科で手術を施行した症例は6例(男性4,女性2),年齢は17~72歳であった.疾患ならびに施行手術は,左房粘液肉腫に対し腫瘍摘出術,浸潤型胸腺腫による収縮性心膜炎に対し心膜剥離術,腎細胞癌に対し右房腫瘍塞栓摘出を伴う外科的根治術,癌性心膜炎による心タンポナーデではそれぞれ悪性リンパ腫に対し腫瘍切除,心膜開窓術,肺癌に対し心膜開窓術,腎細胞癌腎摘後遠隔期右室内再発に対し腫瘍切除,右室流出路再建術を施行した.術後観察期間は4日から30ヵ月であった.手術関連死亡は6例中1例(浸潤型胸腺腫)で,術後4日目に心不全で失った.耐術例は5例でいずれも手術後に明らかなQOLの改善が認められた.悪性リンパ腫の1例は術後化学療法中に敗血症により死亡したが,ほか4例は退院可能となり社会復帰した.3例が経過観察中に悪性疾患関連死亡となった(左房粘液肉腫:20ヵ月再々発,腎細胞癌:13ヵ月肺,肝転移,肺癌:8ヵ月癌性悪液質).循環障害をきたすような心臓関連悪性疾患症例の生命予後は不良であるが,これらに対する外科治療は患者のQOLの改善さらには延命効果が得られる点から妥当であり,同時に確定診断を確実に行い悪性疾患に対する集学的治療を行う意味で有用であると考えられた.

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