日本心臓血管外科学会雑誌
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ヒト心筋細胞の凍結保存法
凍結処理が細胞増殖能に与える影響
横室 浩樹塩野 則次小澤 司藤井 毅郎川崎 宗泰渡邉 善則吉原 克則小山 信彌岡田 光正
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2006 年 35 巻 1 号 p. 14-20

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抄録

再生医療における移植細胞の凍結保存とその細胞に与える影響に関して検討を加えた.コントロール群(n=13):ヒト右心房筋から心筋細胞を分離15日間の培養後,細胞数をカウントし増殖率を測定した.Cell-C.P.(cryopreservation)群(n=23)・Tissue-C.P.群(n=29)=fresh,passage 1,2のヒト心筋細胞または細片化した心房筋を,-1℃/分で-80℃まで凍結し液体窒素内で1週間の保存後,解凍し増殖率を測定した.コントロール群,凍結保存群間で,細胞増殖率および2日間増殖率を比較検討した.生化学的検査・細胞周期:凍結前後に生化学的検査およびgrowth factorと細胞周期を測定した.凍結保存群はコントロール群に比較し増殖率が有意に高率となった(1.7,2.1,3.1倍,p<0.0001).2日間増殖率は凍結保存群が有意に高い増殖率を示した(p<0.05).bFGF,TGF-β1は凍結後,おのおの平均で約59.3,2.49倍に上昇した(p<0.05).細胞周期は凍結保存後,G1/G0期の細胞が低下し,G2+M期の細胞が増加していた.ヒト心筋細胞は分離培養および凍結保存が可能であった.凍結保存は,bFIGF,TGF-β1の分泌促進,細胞周期をG2+M期へ移行することにより細胞の増殖能を促進させた.

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