2006 年 35 巻 3 号 p. 173-176
急性大動脈解離により発症した対麻痺に対し脊髄ドレナージ(CFD)が有効であった1例について報告する.症例は80歳,男性.突然の胸背部痛と両下肢の脱力により発症した.CTによりStanford A型急性大動脈解離と診断した.上行大動脈から腹腔動脈分岐直上に及ぶ解離腔は血栓閉塞していた.両下肢の脱力は脊髄虚血による対麻痺と判断し,発症4時間後よりCFDを開始し,10cmH2Oに髄圧を保った.下肢脱力はCFD開始2時間後から徐々に改善し,32時間後にはほぼ完全に回復した.総ドレナージ量は280mlであった.以後対麻痺の再発は認めなかった.本症例により,急性大動脈解離に伴う対麻痺に対して,脊髄ドレナージが有効であることが示唆された.