日本心臓血管外科学会雑誌
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ABIOMED BVS 5000(LVAS)の装着により救命しえた緊急冠動脈バイパス術後の重症心不全の1例
斎藤 雄平青田 正樹武田 崇秀中根 武一郎小西 裕
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キーワード: 開心術
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2006 年 35 巻 4 号 p. 235-238

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抄録

薬剤や大動脈内バルーンパンピング(IABP)にも反応不良の急性心不全の治療は,機械的循環補助の適応が考慮される.近年,落差脱血方式を採用したABIOMED社製の左室補助人工心臓(LVAS;ABIOMED BVS 5000)が,本邦でも使用可能となってきているが,開心術後の心不全に対する使用例の報告は少ない.症例は52歳,男性.呼吸困難のために当院を受診し,低心機能を伴うrecent myocardial infarctionと診断され,入院加療となった.入院2日目に突然,心室細動となり,蘇生したが効果なく,経皮的人工心肺(PCPS)を装着,緊急心臓カテーテル検査が施行された.その結果,重症3枝病変であり,緊急手術の適応と判断した.同日に緊急冠動脈バイパス術を施行した.手術は,胸骨正中切開,PCPSによる補助循環下に,心拍動下に行った.すべて大伏在静脈をグラフトとして,大動脈より#7と#4PDへgraftingを行った.術中,PCPSの離脱は困難と判断し,左房脱血,上行大動脈送血により,ABIOMED BVS 5000を装着し,PCPSを抜去し,手術を終了した.術後,非乏尿性の腎不全となったが,術後6日目にLVASからの離脱が可能であった.当初,低酸素脳症の影響を認めたが完全に回復し,術後63日目に独歩により退院,社会復帰した.

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