日本心臓血管外科学会雑誌
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小児外傷性胸部大動脈損傷の1手術例
湯浅 毅川口 レオ大原 康壽保浦 賢三
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2006 年 35 巻 4 号 p. 242-245

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抄録

鈍的外傷による胸部大動脈損傷は致命的で即死例も多く,手術適応となる症例は少ない.とくに小児例は希である.外傷性胸部大動脈損傷の13歳男児に,緊急手術を行い良好な結果を得た.症例は自転車運転中に自動車と衝突し,民家の外壁に体幹部左側を強打した.造影CTにより左胸腔の液体貯留,弓部から下行大動脈周囲と上縦隔に血腫を認めた.下行大動脈には肺動脈分岐部レベルでflapと仮性大動脈瘤の形成を認め,外傷性胸部下行大動脈損傷と診断した.他臓器に出血性損傷を認めず,受傷後4時間で手術を行った.右大腿動静脈から部分体外循環を確立,左前側方開胸で到達し,大動脈パッチ形成術を行った.無輸血で経過し,左反回神経不全麻痺を合併したが,術後36日に独歩退院した.術後2年時のMRI検査では異常なく,上下肢間の血圧較差はなかった.小児大動脈疾患では成長に伴い遠隔期に再狭窄や動脈瘤の可能性があり,経過観察が必要と考えられた.

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