日本心臓血管外科学会雑誌
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若年者の鈍的交通外傷による右房破裂の2例
濱路 政嗣河野 智石上 雅之助御厨 彰義北野 満松田 光彦
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2006 年 35 巻 5 号 p. 295-298

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抄録

鈍的胸部外傷による外傷性心破裂の原因は交通事故であることが多く,救命率は15%以下と低いが,本邦でも右心系損傷の救命例の報告が散見される.われわれは10代の若年者の自動車事故による右房破裂に対する緊急手術を2例経験した.症例1は18歳,男性.受傷後に搬送された救急病院で,心タンポナーデと診断され心嚢穿刺後,当院へ転送された.ICUに収容して間もなく,徐脈,血圧低下が再び出現したため剣状突起下で心膜開窓施行後,手術室で開胸止血術を行った.右心耳先端に約1cmの裂傷を認め,縫合閉鎖した.術後経過は良好であった.症例2は19歳,男性.受傷後,1次救急病院からの搬送中に救急車内で呼吸停止,徐脈となり,当院到着時は心室細動であった.蘇生後,ICUで開胸した.右房と上大静脈および下大静脈の移行部のそれぞれに約2cmの裂傷を認め,縫合閉鎖した.術後血行動態は改善したが,意識は回復せず救命にはいたらなかった.心タンポナーデが診断されたら,気道確保と心嚢ドレナージを行いつつ対応可能な救急施設へ救急搬送することにより救命率の向上が期待できると考えられた.

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