2006 年 35 巻 6 号 p. 309-314
開心術後の心房細動の発症は日常多く遭遇する合併症の一つであるが,その予防に決定的なものはなく,管理に難渋することが少なくない.われわれは,その発症に交感神経活性の亢進が関与しているのではないかと考え,開心術後の心房細動を発症するリスクの少ないと考えられた57例につき,心房細動発症前の状況を調査し,さらに術前,第3病日,第7病日に交感神経活性の生化学的指標であるノルエピネフリンの血漿中濃度と24時間尿中排泄量を測定した.その結果,心房細動を発症した群において発症前の心拍数がより多く,血漿ノルエピネフリン濃度および24時間尿中ノルエピネフリン排泄量が有意に上昇していた.以上より,開心術後の心房細動の発症に交感神経活性の亢進が大きな役割をはたしていると考えられる.