日本心臓血管外科学会雑誌
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急性腹症を契機として診断された心臓悪性リンパ腫の1例
島本 健武内 俊史御厨 彰義小田 基之
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2006 年 35 巻 1 号 p. 53-56

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抄録

心病変のある悪性リンパ腫は,一般的に病変部位が特殊であることや診断が遅れやすいこともあり予後不良である.今回急性腹症を契機に入院し,心エコーやCTにより診断された心臓悪性リンパ腫を経験した.症例は46歳,女性.腹痛・発熱を自覚し,近医で精査の結果,右房および右下肺に25mmの腫瘤を発見された.心腫瘤による塞栓症の危険が大きいため,準緊急的に開心術下に右房腫瘤切除術を施行した.病理検査でびまん性大細胞型B細胞性非ホジキン性悪性リンパ腫と診断された.術後2日目に再び腹痛を自覚し,腹部CTにてfree airおよび多量の腹水を認めた.そのため緊急開腹術を施行し,腫瘍による穿孔をきたした空腸を部分切除した.その後の経過は順調であり,化学療法のため開心術後15日目で他院に転院した.近年心臓原発悪性リンパ腫の定義は,心臓以外の臓器に転移があっても心に大きな腫瘤があれば心臓原発であるとしているが,その定義に関する若干の文献的考察を含めて報告する.

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