被覆材として非生分解性材料を用いた新しい大口径人工血管(トリプレックス®,テルモ社製)が開発され,その有効性と安全性について検討した.対象症例は170名で,年齢は28~85歳(69.0±10.0歳:平均値±標準偏差,以下同様)であった.術後12ヵ月の累積開存率は100.0%,拡張比は1.03±0.06(n=139)であった.手術時の操作性は,「良好」と評価された症例が75%以上を占めた.体温およびCRP,WBCの変動に関しては,退院時にはほぼ術前値に回復し,再上昇(再燃)は認められなかった.トリプレックス®との因果関係が否定できない有害事象は33件発生したが,大部分は大動脈手術後の合併症として既知の事象であった.以上,トリプレックス®は手術時に良好な操作性を示し,開存性,耐拡張性にも優れ,術後の炎症反応の遷延や再燃がみられない,大動脈用の人工血管として有用であることが確認された.