2007 年 36 巻 5 号 p. 288-291
症例はFallot四徴症がありながら手術を受けずに生活してきた44歳男性.2~3年前から労作時息切れや胸部不快感がみられるようになり,約半年前から断続的に発熱・咳が現れた.2006年1月に38℃以上の発熱が下がらず緊急入院,心エコーで三尖弁に巨大疣贅を認め感染性心内膜炎として抗生剤治療を行ったが,3週目に感染性肺塞栓を起こして感染コントロール不良のため準緊急手術となった.手術には,感染コントロールと循環動態の安定化を目的に,できるだけ異物使用をおさえたFallot四徴症手術と三尖弁形成術が必要と考えた.三尖弁の疣贅は3尖すべての広範囲に及んでいたが,弁置換術・弁切除術は避け,自己心膜を用いた弁形成術とした.三尖弁狭窄を伴う形成術とし,これに両方向性Glenn手術を追加することによって,手術を無事終了した.術後は,術前塞栓性肺炎を起こした部位が肺膿瘍となったがドレナージ術により軽快し,術後12ヵ月経った現在も元気に通院している.