日本心臓血管外科学会雑誌
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術後劇症型抗リン脂質抗体症候群を合併した連合弁膜症の1例
遊佐 裕明西谷 泰村田 明齋藤 典彦星野 修一
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2007 年 36 巻 6 号 p. 329-332

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抄録

症例は39歳,女性.37歳のときに心雑音を指摘され,当院循環器内科を受診した.心エコー上,僧帽弁逆流(MR)と大動脈弁逆流(AR)をmild認め,定期的に経過観察を受けていた.39歳時に心エコー上MRはsevereに,ARはmoderateになったため,手術適応とされた.混合性結合織病のためステロイド内服中で,また,深部静脈血栓症の既往があったため,合併症の精査を行ったところ,抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断を得た.術前にステロイドパルス療法と血漿交換療法を行い,手術に臨んだ.手術は生体弁による2弁置換術を行った.術翌日に,血小板数の急激な減少を認めたため,劇症型APSと診断し,ステロイドパルス療法,大量免疫グロブリン療法,血漿交換療法を併用したところ,術後3日目に血小板数は増加に転じた.APSは手術などを契機に劇症化し,多臓器不全に陥ることがあり,その診断は難しく,また治療法もいまだ確立されておらず,厳重な周術期管理が必要である.

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