2007 年 36 巻 1 号 p. 58-62
症例は79歳の女性で,他院で64歳時に洞機能不全症候群に対してペースメーカー植え込み術,68歳時に三尖弁閉鎖不全症(TR)と心房細動に対して三尖弁輪形成術とMaze手術を施行された既往を有し,さらに73歳時にはTRと僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対して三尖弁および僧帽弁置換術(生体弁)を施行されていた.その後,近医でfollowされていたが,約2ヵ月前から生体弁機能不全に基づく,MRの再発によって難治性心不全をきたし,2005年11月,当科に紹介となった.1)2度の開心術の既往を有すること,2)肝硬変・甲状腺機能低下症を伴った全身状態不良症例であること,3)生体弁耐用年数が6年と短いことから,手術の低侵襲化をはかる目的でvalve-on-valve techniqueによる再僧帽弁置換術を行った.術後,MRの改善に伴い,心不全は軽快し,新たに植え込んだ弁にも問題はなかった.Valve-on-valve techniqueは,手術侵襲の軽減が期待できることから,とくにhigh risk症例の生体弁機能不全に対する再弁置換術に有用な手法であると考えた.