真菌と真菌症
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白癬患者および家塵からの皮膚糸状菌の分離
新村 陽子
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キーワード: 白癬, 皮膚糸状菌, 家塵
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1985 年 26 巻 2 号 p. 74-80

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抄録

白癬患者136例とその患者家塵125試料および非白癬者の家塵57試料から皮膚糸状菌の分離を試み, その分離菌について検討した.
白癬患者の原因菌は, 5例の重複感染を含め, Trichophyton mentagrophytes 57例 (41.9%), T. rubrum 55例 (40.4%), Microsporum canis 18例 (13.2%), Epidermophyton floccosum 9例 (6.6%), M. gypseum 1例 (0.7%), T. violaceum 1例 (0.7%) であった. 一方, 患者の家塵からの皮膚糸状菌の検出は125試料中81試料 (64.8%) で, そのうち, 患者の原因菌を家塵から分離したのは, 重複感染5試料および家族内感染で菌種が異なった症例の2試料を除いた118試料中48試料 (40.7%) であった. 家塵より分離された皮膚糸状菌と患者の原因菌との関連をみると, T. mentagrophytes は47試料中28例 (59.6%), T. rubrum は50試料中5例 (10.0%), M. canis は12試料中10例 (83.3%), E. floccosum は7試料中3例 (42.9%), M. gypseumT. violaceum は1試料中1例 (100%) であった. これに対し, 非白癬者の家塵からの菌検出は57試料中15試料 (26.3%) で, T. mentagrophytes が12例 (21.1%), M. gypseum が3例 (5.3%) であった. これら皮膚糸状菌の分離された家塵を室温で保存して菌検索を行なった結果, M. gypseum, M. canis, T. mentagrophytes, E. floccosum は, それぞれ, 最高, 16ヵ月, 12ヵ月, 9ヵ月, 9ヵ月後に分離することができた. 以上, 家塵から各皮膚糸状菌が分離されたことと, 自験症例中の家族内同症発生例や, T. violaceum による再発例から, 家塵は, 白癬の感染源として重視すべきであると考えられた.

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© 日本医真菌学会
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