日本農村医学会雑誌
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愛媛県における広節裂頭条虫症の1例
平井 和光西田 弘塩飽 邦憲
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1978 年 27 巻 1 号 p. 75-78

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抄録

日本における裂頭条虫症は広節裂頭条虫が唯一の寄生種とされており, その分布は, 日本海沿岸の河川流域, 京都, 北海道などが主な流行地であった。しかし, 旅行, 流通機構の拡大にともない国内種々の地域で発見されるようになった。一方, 加茂らは, 日本における人体寄生裂頭条虫を詳細に検討し, 広節裂頭条虫以外の海産哺乳動物寄生裂頭条虫の人体寄生の存在を示唆した。これらの事実から愛媛県松山市在住の35才男子から排出された裂頭条虫を詳細に検討した結果, 虫体の外観, 生殖口と子宮口間の間隔の広いこと, 貯精嚢腹面で急角度をもって屈曲する膣の走行, 睾丸, 卵黄腺の分布が片節ごとに区分されていること, 走査電子顕微鏡による卵穀表面像の陥凹の間隔が広いことなどの特徴から広節裂頭条虫と同定した。しかし, 愛媛県在住者が広節裂頭条虫に感染したことは, きわめてまれな症例である。

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