1991 年 40 巻 1 号 p. 25-30
手術胃癌478例について検討した。男294例, 女184例, 男女比1.6であった。70才以上群 (高令群) と69才以下群 (非高令群) とで比較すると, 高令群に男が多い傾向がみられた。全胃癌に占める高令群の割合は34.1%で全国集計より高かった。高令群では胃集検や健康診断による発見例は少なく, stage IVが多く, 非切除がやや多く, 胃全摘が少なく, 切除術がやや低かった。癌病巣数は多発傾向がみられた。占居部位や拡がりおよび組織型では, 上部が少なく下部が多く, 前壁・全周が多く, 高分化型の限局性のものが多い傾向がみられた。手術直接死亡率は差を認めなかったが, 5年生存率は不良で他病死の影響が示唆された。高令者では, 既往症, 術前合併症が92%に, 術前検査値異常は96%にみられ, 術後合併症は42%に発現した。術後は精神障害に対する配慮が必要である。高令者であっても手術可能な症例には積極的に根治手術を目指して手術に臨むべきであるが, 胃全摘には慎重に対応すべきであると考える。術前のリスク評価を慎重にして充分な前準備のもとに根治手術を施行すれば, 高令者も非高令者と比べて大差ない治療成績とQOLが得られるものと考える。