日本農村医学会雑誌
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2年以上にわたり抗ミトコンドリア抗体持続陽性を呈した薬剤性肝障害の1例
永山 和宜酒井 義法田沢 潤一宮坂 有香余 心漢佐久間 郁行前川 伸哉佐藤 千史
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1997 年 46 巻 1 号 p. 46-51

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抄録

症例は58歳男性。1994年6月, 葛麻疹に対しフマル酸エメダスチンを投与されたが, 7日後に黄疸が出現したため入院した。AST 106 U/l, ALT 274 U/l, T-Bil 6.8mg/dl, γ-GTP 857 IU/l, ALP 807 IU/lと胆汁うっ滞型の肝障害を示し, 抗ミトコンドリア抗体 (AMA) 80倍と陽性で抗PDH抗体 (抗M2) は陰性であった。肝生検では中心静脈周囲に胆汁栓を, 門脈域に軽度のリンパ球浸潤を認めたが胆管病変はなく, 線維化も認めなかった。フマル酸エメダスチンに対するリンパ球刺激試験 (DLST) が陽性で薬剤性肝障害と診断した。薬剤中止後も胆道系酵素の高値とAMAの強陽性が持続したため1996年9月, 再び肝生検を施行した。組織像では小葉構造は保たれ, 門脈域の一部にリンパ球浸潤を, また一部で細胆管増生, 胆管消失を認めたが原発性胆汁性肝硬変 (PBC) とは異なる組織像であった。薬剤性肝障害でAMA陽性となることは極めて稀であり, 2年以上の長期にわたり経過を観察しえた示唆に富む症例と考えられた。

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