2001 年 50 巻 1 号 p. 15-22
近年糖尿病患者の増大は著しく, 積極的な対応が求められている。長野県松川町では, 住民基本検診の血糖異常者に対して, 1995年から訪問保健活動を開始している。そこで, 1992年から1997年までの6年間毎年住民総合検診をした人 (1,421名) で, 1994年または1995年に血糖異常を指摘された人 (130名) のうち, 糖尿病治療歴, 家族歴がなく1997年時点で70歳未満の人65名について, 訪問保健活動の有無別に検診結果の経年変化を解析し, その効果を検討した。訪問を受けた人は30名 (訪問活動詳), 訪問を受けていない人は35名 (未訪問活動詳) であった。血糖検査の正常率は, 1996年には両群とも改善したが, 1997年には訪問活動群では90%とさらに改善したのに対し, 未訪問活動群では69%と低下し, 訪問活動群のほうが有意に高くなった。1998年検診受診者での検討でも同様の傾向がみられた。1995年と1997年の検査結果の血糖異常程度別にみても, 訪問活動群のほうが未訪問活動群より, 1995年検査の軽度異常, 中等度異常のいずれの異常程度でも, 1997年には正常率が高い傾向がみられた。糖尿陽性率も, 訪問活動群では, 1995年の6名 (20%) が1997年には3名 (10%) となり半減していた。また訪問活動群では体重が減少傾向であったのに対し, 未訪問活動群では体重増加傾向がみられた。以上の結果から, 訪問保健活動は, 血糖異常者の自覚を促し, 保健行動の持続性に効果があることが示唆された。地域においても住民基本検診での血糖異常者を対象にしたこうした保健活動が, 糖尿病予防の点から重要であると考えられる。