1987 年 37 巻 2 号 p. 94-104
筆者は, 鍼灸治療の効果判定法を検索する目的で膝痛症患者と健康者の大腿四頭筋, ハムストリングの階段昇降時の筋活動を表面電極法による筋電図で観察し, その活動パターンについて分析した。その結果, 健康者の大腿四頭筋では階段昇降時の立脚相から遊脚相にかけて明確な2峰性のパターンを示すのに対して膝痛症群では不規則な活動パターンを示すことを既に報告 (全日本鍼灸学会誌 35巻3, 4号) した。
本研究では, 大腿四頭筋に加えて前脛骨筋及び腓腹筋を対象に観察し, 分析した。
(1) その結果, 大腿四頭筋は健康者で, 2峰性パターンを示し, 膝痛症群では不規則であった。
(2) 階段昇降時の1歩行周期で膝痛症群の前脛骨筋, 腓腹筋の筋活動は, 健康者に比べて活動が高い傾向にあり, 常時筋収縮を行っていることが判った。
(3) 階段降行中の大腿四頭筋及び腓腹筋の筋活動の測定は, 膝関節機能の客観的評価に有用であり, 膝痛症患者の鍼灸治療の対象として重要である。