1990 年 40 巻 4 号 p. 369-376
隔物灸は, その傷病に応じて用いる隔物が異なる。このことから, 隔物灸では隔物による温熱刺激緩和効果だけでなく, 用いた隔物の含有成分による薬理作用も重要な決め手となっていることがうかがわれる。その薬理作用のうち, 特にラジカルスカベンジャー作用の有無について, 電子スピン共鳴(ESR)スピントラッピング法により研究したので報告する。
隔物としては, 生姜と大蒜を用いた。ハイドロキシラジカル(OH・)生成反応液に生姜と大蒜の各エキスを添加したところ, OH・由来のシグナルが観察されなかった。これは, 隔物のエキスが, ラジカルスカベンジャー作用を持っているか, あるいはラジカル生成反応の阻害効果を持っているかどちらかであることを示している。生姜や大蒜を用いた隔物灸では, これらのラジカルに対する作用により治療効果を得ている可能性が示唆された。