全日本鍼灸学会雑誌
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後遺症を有する末梢性顔面神経麻痺に対する低周波鍼通電療法の1症例
森戸 麻美菅原 正秋吉川 恵士中野 秀樹
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2003 年 53 巻 2 号 p. 190-194

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抄録

末梢性顔面神経麻痺の中で最も頻度の高いBell麻痺は、一般に自然治癒率70%といわれる予後良好な疾患である。本症例は発症後2年以上経過し、医療機関において完治困難と診断されたBell麻痺である。顔面神経麻痺スコアは24点、病的共同運動、顔面痙攣、ワニの涙現象等の後遺症が認められた。サーモグラフィでは、前頬部の麻痺側と健側の温度差が0.7℃で、麻痺側が低温であった。鍼治療は、顔面麻痺側の微小循環の改善を目的として、顔面神経および表情筋に対して低周波鍼通電療法を行った。
顔面神経麻痺スコア、サーモグラフィを中心に評価した結果、スコアの上昇と麻痺側と健側の温度差が減少した。また、主観的には表情筋が動かしやすくなり、ワニの涙現象が減少した。低周波鍼通電療法を長期的に行うことで、局所の微小循環の改善が認められ、患者のQOLを向上させる可能性が考えられた。

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