全日本鍼灸学会雑誌
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慢性疼痛の評価と治療
菅原 正秋吉川 恵士林田 眞和有田 英子花岡 一雄
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2004 年 54 巻 2 号 p. 120-136

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抄録

痛みが主観的なものであることを説明するのに次の定義がよく用いられている。即ち、痛みとは「組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、そのような傷害をあらわす言葉を使って表現される感覚、情動体験」 (International Association for theStudy of Pain : IASP, 1994) である。痛みを客観的に評価することは、その痛みをもたらす疾患の診断に必要であるばかりか、痛みに対する治療効果の判定にも必要なことである。
慢性疼痛の評価法として、VAS (Visual analog scale) やNRS (Numerical ratlngscale) などがよく用いられるが、近年、Face visual analog scaleや神経選択的電流知覚検査 (CPT検査) なども多用されている。また、ドラッグチャレンジテストは評価法であるばかりか、有効な治療法となり得ることもあり注目されている。
慢性疼痛の治療法としては、エピドラスコピーや光線療法などの報告が増加している。エピドラスコピーとは慢性腰下肢痛を有する患者に対しておこなう内視鏡下手術で、本邦では腰椎椎間板ヘルニア、failed back syndrome, 腰部脊柱管狭窄症などの腰下肢痛を有する症例に対し、施行する機会が増えてきた。光線療法では、直線偏光近赤外線治療器やキセノン光治療器の有効性を示す報告が多くみられる。神経ブロックは依然としてペインクリニックにおける中心の治療法であるが、非侵襲的な治療法も望まれており、鍼治療や光線療法などの理学療法も今後大いに需要が高まると予想される。

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