日本東洋医学雑誌
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有熱かぜ症候群患者における漢方治療の有用性
本間 行彦
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キーワード: かぜ, 発熱, 解熱剤, 漢方薬
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1995 年 46 巻 2 号 p. 285-291

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抄録

かぜウイルスを感染させて発熱させた動物において, 解熱剤を投与すると死亡率が増加し, 解熱剤による解熱は生体にとって不利であるという報告が基礎研究分野から出されている。著者はこの問題を臨床的に確かめるために, かぜ症候群患者に解熱鎮痛消炎剤 (Fenoprofen 1200mg/日, 分3) または漢方薬を投与し, 初診時に37.0℃以上の発熱のある80名について, 両者の症状の経過を比較検討した。その結果, 熱の持続期間は解熱剤群 (n=45) 2.6±1.7日, 漢方薬群 (n=35) 1.5±1.9日 (p<0.001) と前者が長く, 発熱の再燃も漢方群 (0%) より解熱剤群 (11.1%) に多い傾向がみられた。全症状の持続期間も前者が6.6±3.6日, 後者が5.1±1.9日 (p<0.05) と解熱剤群が有意に長く, 漢方薬群に比較してかぜの回復が遅延することが知られた。
以上より, 有熱かぜ患者に対する漢方薬投与は解熱剤使用より有利であると考えられた。また, かぜにおける発熱は生体の合目的的反応と推測され, 解熱剤使用は問題であるかもしれない。

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