日本東洋医学雑誌
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慢性関節リウマチに対する大防風湯治療
小暮 敏明萬谷 直樹新沢 敦酒井 伸也嶋田 豊田村 遵一寺澤 捷年
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2002 年 53 巻 4 号 p. 335-341

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抄録

大防風湯が奏効した伝統医学的な症候の異なるRA患者の二症例を経験した。症例1は73歳女性。1977年頃, 両膝関節痛を自覚して近医を受診しRAと診断された。84年に漢方治療を希望し当科を受診 (Steinbrocker 分類: Stage IV, Class III)。桂枝二越婢-湯加苓朮附加減などの投与を受け小康状態を得ていた。1994年両膝人工関節置換術を受けた。ADLは向上したが両手, 肘, 肩, 足関節痛は持続していたため〓苡仁湯などを投与, Bucillamine, Salazosulfapyridine を併用したが疼痛が続くため96年12月転方を考慮した。両手指の変形が著しく, 両肩, 両肘関節痛を訴え全身倦怠感があった。皮膚は枯燥し四肢の痩せがみられ日常生活はつえ歩行。桂枝芍薬知母湯から大防風湯へ転方後, 関節痛の軽減を得た。
症例2は50歳女性。1994年, 右手, 両足, 膝関節痛が出現, 近医でRAと診断された。96年から多関節痛が増悪し, 本院整形外科を受診, Bucillamine の投与を受けたが皮疹が出現したため中止となり当科を紹介受診した。漢方治療を試みたが疼痛は持続していた。このため各種抗リウマチ薬を併用したが無効でRFと炎症反応は増悪した。この間, 漢方薬は桂枝二越婢-湯加苓朮附加減, 〓苡仁湯などを投与していたが効果が得られなかったため, 2000年6月に転方を考慮した。RFは860U/mlでESR72mm/hr, CRPは4.0mg/dlであった。両手, 肘, 足関節痛があるが両手指の変形はない。中肉中背で皮膚枯燥や浮腫はみられなかった。大防風湯に転方後は疼痛や炎症反応は低下しRFの高値も速やかな改善を得た。
症例1は古来からの大防風湯証に一致していたが, 症例2は皮膚枯燥, 爪の異常, めまい感などの血虚の症候に乏しく, 関節変形が少ないことから, いわゆる大防風湯証と異なっていた。このことから虚状に乏しいRA症例の中に本方剤が有効である患者群が存在することが示唆された。

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