日本東洋医学雑誌
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吸入ステロイド薬時代の漢方治療の役割
伊藤 隆
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2004 年 55 巻 4 号 p. 447-453

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抄録

吸入ステロイド薬の国際的標準化に伴い, 漢方治療は発作に対する対応から予防に重点が変化しつつある。成人例では重症例の減少と症例の高齢化により補腎剤が増加。小児例では虚弱化により補脾剤が増加。昔日の漢方治療の有効率は1年以上の無発作例が1~2割であり, 吸入ステロイド薬の治療効果に及ばない。しかし, 軽症喘息で吸入ステロイド薬を要さない場合, あるいは重症喘息で吸入ステロイド薬を用いてもコントロール不良な症例に対しては, 漢方治療は優れた役割を果たすことができる。軽症喘息例では柴朴湯と小青竜湯・麻杏甘石湯などの麻黄剤を用いる。麻黄剤については試飲により効果を確認しておくとよい。重症喘息および慢性閉塞性肺疾患は, 八味地黄丸, 麦味地黄丸料などの補腎剤を主に用いる。八味地黄丸によるピークフロー値上昇の作用機序は明らかではないが, DHEA系の賦活が関与している可能性がある。心不全合併例に対しては木防已湯の効果が期待される。

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