医学教育
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胸痛鑑別診断学習における診断が確定している患者からの病歴再聴取の効果
伊賀 幹二八田 和大西村 理今中 孝信楠川 禮造
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1997 年 28 巻 1 号 p. 41-44

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抄録

3名の卒後1年目初期研修医に, 医師国家試験に合格直後の6-9月までの間に, 胸痛の原因が確定している外来通院中の循環器疾患患者から胸痛発症当時の病歴を聞く機会を与え, その有用性を検討した.病歴再聴取された症例数はのべ73例におよび, 内訳は, 重複も含め狭心症38例, 急性心筋梗塞16例, 肺梗塞10例, 種々の不整脈による胸痛7例, 肥大型心筋症6例, 解離性大動脈瘤4例, 心膜心筋炎2例であった.不安定狭心症から心筋梗塞への移行例は7例であった.参加した初期研修医全員が狭心症の診断に病歴がもっとも大切であるということが理解でき, 病歴聴取開始後, 約15例目より狭心症の鑑別診断が自信をもって行えるようになり, この研修が以後の胸痛を主訴とする患者の救急診療に役立ったと評価した.しかし, 6月にこの機会を与えられた1名より, もう少し臨床になれた後に研修を始めた方がよいとの意見があった.指導医からは, この研修終了4か月の時点で, かれらに胸痛を主訴とする新患の病歴をとる機会を与えた結果, 彼ら1人で必要最低限の病歴を聴取できるようになったと評価された.以上より, 初期臨床研修開始後3か月以降に, 初期研修医1人につき約20症例の診断が確定された胸痛患者の病歴をとることにより, 狭心症の診断能力が大幅に向上すると考える.

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