医学教育
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看護教育における学生参加型公衆衛生学教育の学習満足度
塩飽 邦憲樽井 惠美子山根 俊夫高 同強山根 洋右
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1998 年 29 巻 6 号 p. 393-397

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抄録

健康ニーズの変化, 医療・看護の知識や技術の進歩速度の促進により, 医学・看護学教育は, 知識・技術伝授から学習者主体の問題解決型教育へと移行しつつある. 看護専門学校2年生に対して, 公衆衛生学教育の学生参加型問題解決教育を導入し, その教育評価を試みた. 教育後の公衆衛生学教育への満足度は,「大変満足」55%,「やや満足」41%,「普通」3%と高かった. 公衆衛生学への関心は, 教育前後で,「大変ある」0%から17%へ,「ややある」10%から48%へと増加した. 看護学校の教育改善については,「学生の自己学習強化」や「テユータ制による個別学習強化」が若干増加した. 学生参加型教育方式の拡大については, 積極的な意見は17%に留まり,「科目と講師でケースバイケース」66%が多かった. 公衆衛生学の学習満足度と学生のレディネスや学習タイプとの関係を明らかにするために, 共分散構造解析により学習満足度に関するMIMIC (multiple indicator multiple cause) モデルを検討した.「学習者レディネス」は, 教育前に公衆衛生学に関心を示すことと強く関連し, 学校教育への満足度とは負の関連を示した.「自立的学習タイプ」は日頃から予習復習をすることと正の関連を示し,「学習満足度」は学生参加型教育方式拡大, 自主学習強化志向の看護学校教育改善と関連し,「学習者レディネス」および「自立的学習タイプ」と正の因果関係を示した. 問題解決型学習方法を受け入れ, 発展させる学生は, 元来, 自主的な学習態度を持ち, 知識伝授型教育には不満を持っていることが示唆された. このため, 自主的な学習態度の育成には, 教師が学生の持つ教育の不満を受け入れ, 個々の学生の成長と多様性に応じたテュータ制による個別教育が重要と考えられる.

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