大学付属病院は特定機能病院として高度先進医療の担い手であると同時に, 大多数の医学部卒業生にとっては卒後初期研修を受けることによりプライマリ・ケア能力を身につける場ともなっている.あらゆる救急疾患の初療が行えるようにすることは, プライマリ・ケア教育の重要課題である.佐賀医科大学救急部は1次から3次のすべての救急患者を年間7,000~8,000人受け入れているが, 研修医の経験症例の分析を行うことにより, 大学病院でどの程度プライマリ・ケア教育が行えるかを検討した.1996年度に当院救急部で3か月間の研修を行った研修医9名 (卒後3年次2名, 2年次4名, 1年次3名) を対象として, 経験した症例数, 1次2次3次疾患の別, 診断名について調査した.3か月間の経験症例数は平均214.6名であり, 1次2次3次の割合は平均63.1%, 20.9%, 16.0%であった.この中には約59種類の1次疾患, 約31種類の2次疾患, 約15種類の3次疾患が含まれていた.これらの経験内容は日本医学教育学会の提言する卒後基礎的臨床研修目標案をほぼ満足する内容であった.特定機能病院で, 十分なプライマリ・ケア教育を行うためには, 当院のように1次から3次のすべての救急患者を多数受け入れ, かつ全研修医に救急研修を義務化する必要性があることが示唆された.