2001 年 32 巻 3 号 p. 159-167
わが国の医師国家試験合格率 (第75~94回) の推移とその変動様式に見られる特徴について検討した. 各大学の医師国家試験合格率の変化は前年度の合格率の変化にある程度依存しており, ある年の合格率の前年合格率との差 (前年差) と, 翌年の合格率の前年差との間には緩い負の相関 (r=-0.454, n=1262) が認められた. われわれはこれを前年度効果または前年度依存性と呼称した. 負の相関係数で評価した前年度効果は, 全国平均合格率が低下から上昇に転ずる時に強くなり (r=-0.494, n=475), 上昇から低下へ転ずる時に減弱した (r=-0.393, n=551). これらの現象は受験者側と出題側の要因間の相互作用から説明し得ると考えられた.