日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
六塩化タングステンおよび五塩化タングステンの熱力学的性質
詫間 貴川久保 正一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1972 年 1972 巻 5 号 p. 865-873

詳細
抄録

六塩化タングステンの気相中での分解平衡および五塩化タングステンの二三の熱力学的性質に関して研究した。六塩化タングステンおよび五塩化タングステンの昇華,蒸発および分解により生成した気体の電子スペクトルを測定した。五塩化タングステンの蒸気圧はBourdon型マノメーターを用いて測定した。
気相中で,六塩化タングステンは39.2,30.8,27.0および23.2kKに,五塩化タングステンは42.6,36.4,28.2および12.1kKに,W2Cl10は31.7kKにそれぞれ吸収帯が認められた。六塩化タングステンを加熱したさいの電子スペクトルの変化から,六塩化タングステンは約240℃以上でWCl6(g)=WCl5(g)+1/2Cl2(g)なる分解反応を起こすことがわかった。この反応に対する平衡定数は,log K=-4.46×103/T+5.66(240~450℃)で表わされる。五塩化タングステンの昇華圧(Psub)および蒸発圧(Pevap)はつぎの式で表わされる;logPsub(atm)=-4.11×103/T+7.41(150~251℃),logPevap(atm)=-2.77×103/T+4.85(251~287℃),W2Cl10(g)=2WCl5(g)なる反応に対する平衡定数は,log K=-1.35×103/T+3.47(256~480℃)で表わされる。
これらの結果から,熱力学的数値を求めるとつぎのようになる。WCl6(g)=WCl5(g)+1/2Cl2(g)なる反応に対しては,ΔG0dec=20.4×103-25.9Tcal/mol,ΔHdec-20.4kcal/molおよびΔSdec-25.9cal/deg・mol;WCl5(g)=WCl5(g)なる反応に対してはΔG0sub=18.8×103-33.9Tcal/mol,ΔHsub=18.8kcal/molおよびΔSsub=33.9cal/deg・mol;WCl5(1)-WCl5(g)なる反応に対しては,ΔG0evap=12.7×103-22.2Tcal/mol,ΔHevap-12.7kcal/molおよびΔSevap=22.2cal/deg・mol,およびW2Cl10(g)=2WCl5(g)なる反応に対しては,ΔG0diss=6.18×103-15.9Tcal/mol,ΔHdiss=6.18kcal/molおよびΔSdiss=15.9cal/deg・mol。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top