陸水学雑誌
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浅い湖における沈降粒子の挙動と珪藻殻堆積過程
北浦におけるセディメントトラップ実験結果
納谷 友規谷村 好洋土谷 卓阿部川 秀人中里 亮治天野 一男
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2004 年 65 巻 3 号 p. 203-213

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抄録

浅い湖における沈降粒子の挙動と珪藻殻堆積過程を明らかにすることを目的として,茨城県南東部に位置する浅い富栄養湖である北浦においてセディメントトラップを設置し,沈降粒子と珪藻殻の堆積量を測定した。その結果,北浦における全沈降粒子堆積量の80%が再懸濁による再堆積物であることが明らかになった。そして,珪藻殻捕集量の季節変化は生体と遺骸で異なる傾向を示し,遺骸の捕集量変動は再懸濁物量変動と似た傾向を示すことが明らかになった。これらの事実は,再懸濁による堆積物の巻き上がりが浅い湖における珪藻殻堆積過程を支配する主な要因であること,そして再懸濁は堆積物表層に生体で存在する珪藻を再び水柱に循環させ,浅い湖における珪藻の生産にも直接関係していることを示唆している。浅い湖における再懸濁は,物質循環を理解するためだけではなく,珪藻の生態を考察する上でも,重要な要素と考えられる。

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