日本生気象学会雑誌
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体温下降反応からみたネズミの体温の日内変動
磯部 芳明大原 孝吉
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1987 年 24 巻 3 号 p. 93-103

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抄録

体温の概日リズムの成立機序を知る目的で, 薬物投与時の体温の下降反応を検討した.
明暗交替下 (L, 0700-1900: D, 1900-0700) 飼育, 体温リズムの明瞭なネズミにLD下で, 一定時刻にPentobarbitalまたはCapsaicinを腹腔内に投与して, 両薬物の体温の下降反応を比較した.
1) 薬物投与前に体温 (直腸温) と皮膚温 (尾部温) をLD下で連続測定したところ, 体温の頂値の出現時刻は皮膚温のそれより4時間ほど早かった.
2) Pentobarbita1による体温下降の程度は体温の日内変動の急峻な上昇期 (1500-) や下降期 (0300-) よりも安定した時期 (2100-, 0900-) の方が大であった.
3) Capsaicin投与による体温下降度はD期の方がL期よりも大であり, このときの皮膚温の上昇度は逆に暗期で小さく明期で大きかった.
4) PentobarbitalとCapsaicinを同時に1000-1200の間に投与したところ, 体温の下降度はPento-barbital単独投与時よりは小さく, Capsaicin単独投与時よりも大きかった.この時の皮膚温の変化度もおのおのの単独投与時の中間の値を示した.
これらの結果から, 体温の日内変動には放熱量の調節によることの方が産熱量のそれより大きく貢献しているものと考えられる.

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