茶業研究報告
Online ISSN : 1883-941X
Print ISSN : 0366-6190
ISSN-L : 0366-6190
近赤外法による茶の総繊維の定量分析
後藤 正岩沢 秀晃柴田 隆夫
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 1989 巻 70 号 p. 67-80

詳細
抄録

近赤外法を用いた茶の品質評価法を確立する目的で,茶芽の熟度と関係のある総繊維を近赤外法によって評価する可能性について検討し,次の結果を得た。
(1)茶の蒸葉乾燥試料について,1100~2500nmの波長範囲の近赤外スペクトルを,未粉砕及び粉砕状態で測定し,その原スペクトルについて比較すると,未粉砕試料の吸光度は,粉砕試料の場合に比べて調査した全波長領域で高かった。また,総繊維の含有率の異なる試料を比較すると,含有率が低いほど試料の原スペクトルの吸光度は大きくなる傾向を示した。
(2)未粉砕試料の2次微分スペクトルから作成した24本の検量線のうち,1818,2330および2152nmの3波長からなる検量線が,82個の検証試料に対して最も精度の高い推定結果を示した。検証試料における従来のNDF法と近赤外法による推定値との単相関係数rおよび検量線の評価指数E.I.は,それぞれ0.921,18.12と良好であり,この検量線は総繊維の定量法として有効なものであることが確認された。
(3)粉砕試料の2次微分スペクトルから作成した30本の検量線のうち,第一波長ヘセルロースに帰属する2270nmを組み入れた4波長(2270,1276,2368,2314nm)からなる検量線は,検証試料(試料数82)において最も高い推定精度を示した。この検量線は,未粉砕試料を基に作成した検量線より優れた相関係数(0.942)及びE.I.(15.49)を示した。しかし,危険率1%のt検定の結果,これらの2つの検量線の推定値に有意な差は認められなかった。
(4)全窒素含有率の検量線と比較して推定精度は劣るが,これは今回用いた試料の従来法による分析精度が低かったことが原因と思われる。このため近赤外法の精度を向上するためには,従来法の分析精度の向上が不可欠である。しかし,近赤外法による茶の総繊維定量分析の可能性は確認できた。
本研究のとりまとめにあたり,有益なご助言を賜った北海道大学応用電気研究所魚住純博士に深く感謝の意を表す。

著者関連情報
© 日本茶業技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top