園芸学会雑誌
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ニホンナシ黒星病抵抗性の種•品種間差異
阿部 和幸栗原 昭夫
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1993 年 61 巻 4 号 p. 789-794

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抄録

ニホンナシ黒星病抵抗性品種育成のため,ニホンナシ,チュウゴクナシならびにセイヨウナシの栽培品種を中心としたナシ属植物に病原菌胞子を噴霧接種し,黒星病抵抗性の種•品種間差異を調査した.
1.各種•品種における黒星病抵抗性程度は,高度抵抗性(HR:接種による肉眼的症状が認められない),抵抗性(R:葉齢の若い葉にえ死斑の形成が認められるが,分生胞子の形成は認められない),り病性(S:各接種葉の分生胞子形成量は少ない),高度り病性(HS:豊富な分生胞子形成が認められる)の4型に分類することができた.
2.接種により胞子形成が認められたり病性(S),高度り病性(HS)の各品種間では発病程度(1.S.S.)と発病葉数が大きく異なり,り病性品種と高度り病性品種の識別が可能であった.
3.ナシ属植物の黒星病抵抗性には明らかな種間差異が認められ,セイヨウナシ(P.communis)の栽培品種はすべて高度抵抗性(HR)を示したのに対して,ニホンナシ(P.pyrifolia)の栽培品種•系統においては,高度抵抗性(HR)を示した'巾着',抵抗性(R)を示した晩三吉'を除き,他はすべて高度り病性(HS)もしくはり病性(S)を示した.また,チュウゴクナシでは,中国原産のP.pyrifoliaおよびP.ussuriensisに属する各品種はいずれも高度抵抗性(HR)もしくは抵抗性(R)を示したのに対し,P.bretschneideriに属する各品種では高度抵抗性(HR),抵抗性(R),り病性(S),高度り病性(HS)を示す品種がそれぞれ認められた.
このように,セイヨウナシおよびチュウゴクナシの各種に多くの高度抵抗性及び抵抗性品種の存在が明らかになり,また,ニホンナシ中にも'巾着'および'晩三吉'のような高度抵抗性および抵抗性品種の存在が確認された.

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