雪氷
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北海道・大雪山における最終氷期以降の永久凍土の厚さの変化の推定
仲山 智子
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1995 年 57 巻 2 号 p. 125-132

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抄録

本研究の目的は,現実的な気温変動に伴う永久凍土の厚さの変化を推定することである.これまで,永久凍土の厚さの変化は定常現象として扱われ,その推定には一般に解析的な手法が用いられていた.そのため,地表面の温度変化はステップ的あるいはべき乗則で与えられ,現実的なものではなかった.そこで,本論文では永久凍土の厚さの変化を非定常現象として扱い,潜熱の発生を考慮した非定常一次元熱伝導モデルを導入することにより,連続的な温度変化に伴う永久凍土の厚さの経時変化を推定した.計算は北海道・大雪山の山岳永久凍土に関して,最終氷期最寒期以降の2万年について行った.その結果,永久凍土の厚さは,2万年前から現在まで地表面温度の変化に追従して変化し,およそ5000年前に11.5 mと最も薄くなった後,現在は30.1 mに達していることなどが推定できた.この結果から,大雪山の永久凍土は氷期以降も融けきることなく存在し続けていたこと,気候最適期以降,再度成長したことが示された.また,永久凍土の厚さの変化は,土壌水分量及び地殻熱流量に対して敏感であるという結果も得られた.

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