育種学雑誌
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オオムギ在来品種における完熟胚由来カルスからの不定根発生率の品種変異と地理的分化
力石 和英武田 和義安田 昭三
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1995 年 45 巻 2 号 p. 211-215

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抄録

本研究では世界各地のオオムギ在来品種269品種を供試して,完熟胚由来カルスからの器官再生率について検討した.本培養条件では不定芽は再分化せず,供試品種の約1/3にあたる85品種が不定根を発生した.それぞれの品種におけるカルス当たりの不定根発生率はO%から100%まで幅広く変異した.地域別にみると日本,朝鮮半島,中国,ネパール,トルコおよび北アフリカ地域の平均値は1~5%の低い値であったが,西南アジア,ヨーロッパおよびエチオピア地域の平均値は13~19%の高い値を示した.栽培オオムギを東亜と西域の品種群に大別する場合,重要な形質の一つである小穂非脱落性の遺伝子型について不定根発生率の平均値を比較すると,東亜に主として分布するBt bt2型の品種では3.3%,西域に主として分布するbt Bt2型の品種では15.7%となり,後者が1%水準で有意に高い値を示した.一方,2種の小穂非脱落性遺伝子型別に二条・六条性および皮・裸性の間で不定根発生率を比較すると,それぞれ有意差は認められず,エステラーゼ同位酵素,Est-1座の各遺伝子型間にも差がなかった.これらのことから,不定根発生率を高める要因は小穂脱落性を支配するBt,Bt2の遺伝子型と関係があるとみられた、

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