水文・水資源学会誌
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野外における不飽和土壌帯中の熱・水分移動特性
諸泉 利嗣堀野 治彦丸山 利輔佐藤 裕一佐藤 幸一
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1997 年 10 巻 1 号 p. 20-31

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抄録

土壌中の熱・水同時移動現象は,水文サイクルの一部として非常に重要な役割を果たす.本研究では,自然気象条件下で得られた地温と圧力水頭の実測値に熱・水同時移動モデルを適用することにより,野外における不飽和土壌帯中の熱・水分移動特性について考察した.また,補正係数ζと地表面境界条件が土壌中の温度・圧力水頭変化に与える影響,および水収支法による蒸発量の算定について検討した. 主な結果は以下の通りである.(1)地温勾配によるフラックス成分の移動方向は,圧力水頭勾配によるフラックス成分に比べると,地温プロファイルの変化にともない複雑に日変化した.(2)水分移動に伴うフラックス成分は,夜間(2:00)と朝(8:00)では全層で下向きであるが,日中(13:00,16:00)は深さ10cmより上層で上向きの流れとなった.(3)水分フラックスと熱フラックスの主要成分は,それぞれ液状水移動によるqlと熱伝導によるqhcであった.(4)補正係数ζの感度解析によって,ζの違いによる計算値の差はほとんどないことがわかった.(5)地表面境界条件の感度解析によって,地温・圧力水頭とも地表面に近いほど感度は鋭敏であることが示された.また,この結果より,深さ25cm以深における圧力水頭の実測値と計算値のズレが,地表面境界条件に起因するものではないことが推察された.(6)計算値より水収支法によって求めた蒸発量は,圧力水頭の実測値を用いて算定した蒸発量よりも若干大きくなった.

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