1997 年 10 巻 6 号 p. 557-570
過去に提案されている水田モデルは大きく,(1)長期流出計算を対象とするもの,(2)短期洪水流出計算を対象とするものの二つに分類される.(1)のタイプのモデルは,耕作者による潅漑・排水というプロセスをモデルに採り入れている一方,出水時の計算がやや簡略化されている.(2)のタイプのモデルは,出水時の水田と河道網系の相互作用を表現しているが,潅漑・排水といったことは考慮されていない.本研究では,それぞれの代表的モデルである複合タンクモデルと低平地タンクモデルを組み合わせることで長期の流出計算と短期の流出計算を統合した新しい水田モデルを構築した.ついで,この新しい水田モデルを構造的モデル化法によって要素モデル化し,木津川上流域に適用した.